そうだ、SEに聞こう!


長々とシステムエンジニアというものを続けていると、非エンジニアの友人や知り合いから色々な相談を受けることがあります。頼られているということ自体はとても嬉しいのですが、中には「またか・・・」と思ってしまうような相談も多々あります。今回はそのような相談の中でも特によく受ける相談を、面と向かって言いづらい率直な気持ちと共に紹介したいと思います。

1.「パソコン何買ったらいい?」

おそらく、自分史上もっとも多い相談がコレです。どうやら非エンジニア界におけるエンジニアという生き物は『パソコンに詳しい人』という定義であるようです。エンジニアだからといってパソコンに詳しいとは限りません。「家では全然パソコン触らない」というエンジニアも結構多いですし、逆に「はあ?パソコン?俺はワークステーションとMacしか知らん」という強者もいます。仕事でパソコンを触っている時間にしても、他のオフィスワーカーと大して変わらないかもしれません。

とはいえ他の業種より詳しそうに映るのも事実。それに「自分で考えろ」とむげに突き放すのも冷たすぎる。というわけでこう尋ねるわけなんです。パソコン買ったら何に使うのかと。

すると大抵はこのような回答が返ってきます。
「ホームページ見れて、メールできればいいかな。予算は3,4万ぐらいで。」
ホームページ? メ、メール・・・?!
そんなもん、どれ買ってもできます。いや、むしろ、スマホやタブレットで充分じゃないか!どうしてもパソコンがいいなら、近所の電気屋行って適当に安いモデル買って来なさい、私はそう諭してあげるのです。

「でも、メーカーによって色々違いがあるんじゃないの?」と相談者は食い下がります。何万海里と広がる大海原から、俺の探し求める財宝をサルベージして欲しいと。しかし、残念ながら貴方のその予算には大した選択肢が許されていません。ThinkPadやLet’sNote、MacBookAirを薦めたいけれど、その予算では到底買えません。そもそも、大海原に繰り出す船さえ買えませんよと説得します。

相談者はせっかく『パソコンに詳しい人』に相談したのにも関わらず、大した成果が得られなかったということで落胆の表情を見せます。なんだよ、冷たい奴だな・・・って思っているかもしれません。

そもそも、3,4万円台のパソコンって、真のエンジニアは『最も買わない』価格帯なんじゃないでしょうか。エンジニアなら、パソコンを買うときは最新モデルをフルスペックでという人も多いと思いますし。ましてや、パソコンのおトク情報にアンテナを張リ巡らせてるわけでもありません。

そういうわけでこの相談、非エンジニア側もエンジニア側も傷付きかねない危険な相談です。私にとっては、あまり受けたくない相談のひとつです。

2.「インターネットが繋がらないんだけど?」

これも非常に多い相談です。家のパソコンのインターネットが繋がらなくなったというもの。この種のネットワーク系の問題って面倒なんですよね・・・。問題の切り分けを行わないとダメなので、実際に見に行く羽目になる場合が多いので。。

そもそも業務アプリ開発を生業としているエンジニアにとっては、ネットワークは専門分野ではありません。もちろん素人さんよりは詳しいでしょうが、専門家の知識には遠く及びません。ですので対応としては 他の端末からでもつながらないのか → ケーブルが抜けてないか → ルーターの電源が付いてるか → IPの設定見てみる → ファイアウォール・アンチウイルスソフトを疑ってみる → ルーターの設定を見てみる → お手上げ です。(ほとんどの場合これで解決できますが)

解決できなかった場合、相談者は『パソコンとパソコンで繋げるものに詳しい人』にせっかく相談したのに・・・と落胆の表情を見せます。こういった場合には、システムエンジニアとネットワークエンジニアは、内科と外科のようなものだと比喩してお話します。すなわち、「内科に外科手術を頼んじゃあいけませんよ」と。

ご家庭のパソコンがインターネットに繋がらなくなった場合、ぜひともプロバイダのサポートセンターにご連絡ください。

3.「コピーしてほしいDVDがあるんだけど」

どうしてもコピーしたいDVDがあるのだが、コピーの方法が分からない OR コピーガードが掛かっている。何とかしてくれないか、という相談もよく受けました。ちなみにコンテンツ的にはAVの場合が多いです。

コピーって簡単に言うけど、そもそも違法だし。仮に違法じゃなかったとしても・・・コピーって結構面倒臭いんですよね。時間もかかりますし、何よりコピー中は自分のパソコンが専有されてる感覚があって、何か気持ちが悪いんです。他に重たい処理しちゃいけないのかなと思っちゃって。

しかもガードが掛かってる物ならなおさら大変です。エンジニアとはいえ、コピーガード解除に詳しいわけじゃありません。貴方と同じように、ネットで検索して、そこに書いてあるスクリーンショット通りに作業するだけなんですよ。そう、貴方と同じラインに立っているんです。

とはいえ門前払いにするのもあまりに冷たい仕打ち。友達だし、「いいよ」って引き受けます。すると「おお、そうか!」と目を輝かせ、DVDを持って来るわけですが、シリーズ物とか、ここぞとばかりに目一杯の枚数を依頼してくるんです。。あーこりゃ半日潰れるな・・・。

どうやら非エンジニア界におけるエンジニアとは『パソコンとパソコンで繋げるものとパソコンで見られるものに詳しい人』という定義らしいです。どうかお願いですから、一度Googleで検索して、自分でトライしてみてください。

4.「ホームページ作ってよ〜」

相当軽いトーンで頼まれます。自分の店 OR 会社のホームページを作ってくれよ的な内容です。そういった人たちは必ずといっていいほど「エンジニアなんだし、パパっとできるでしょ」というノリでいらっしゃいます。その言葉の裏には『相当安く、いや、むしろ無料キボンヌ』という思惑が垣間見えるほどです。

そもそもエンジニアって、デザインの専門家ではありません。餅は餅屋です。カッコいいホームページ作るなら、ウェブデザイン専門のとこに頼んだ方がいいよって善意で教えてあげます。

すると大抵の相談者は「いや、そんなたいそうなものは必要じゃないんで」と答えます。そうか、たいそうな物は必要はないのか。それならば、いっその事ブログでいいんじゃないのかと薦めます。

「ブログかぁ。ブログはよく分からないんだよね」
おいおい。頭悪そうなアイドルでもブログ書いてる時代なのに、そのアナログ感は一体何だ。ちょっとは勉強しなさい。挙句の果てには、「じゃあさ、ここに文章を書いたらページとして表示されます、っていうとこまで作ってくれない?」 世間ではそれをブログと呼びます。

こういう人たちって、ホームページを少し軽視している傾向があるような気がします。広告は必ずしもそのブランドイメージをプラスにするわけではありません。マイナスにする場合もあります。有名人の誰かが「広告は拡声器」と言っていましたが、まさにその通りだと思います。自分の店や会社の『顔』となるべき大切なホームページを素人に依頼しようという考えがよく分からない。

どうやら非エンジニア界におけるエンジニアとは『パソコンとパソコンで繋げるものとパソコンで見られるものとパソコンによるデザインにまで詳しい人』という定義になっているようです。

結論

要するにエンジニアって、パソコンにリンクしている物全般的に詳しいだろうと思われているのですね。まあこれは仕方ないとは思います。内科医にしても、素人の私よりは外科に詳しいだろうと思っちゃいますし。

ただ、悲しいかな日本のシステムエンジニアというものは、常に工数を意識するように教育されています。あの仕事にX時間かかったとか、そんな仕事にはY時間しかかけちゃダメとか。物心ついたときから口酸っぱく言われてきた人も多いはず。

そんなわけで、たとえ友人・知り合いであろうと、『仕事っぽい』ことを頼まれた場合、頭の中で工数をはじいちゃうんですよね。あー、その作業だったら4時間かかるなぁとか。その上、その4時間に単価まで掛けちゃう。4×3,500で14,000円かぁ・・・って考えちゃうわけなんですよ。

そうすると何だか、14,000円を他人におごってあげる気になってしまう。もちろん実際にお金をあげるわけじゃない。しかし、少なくとも貧乏性の私はそう感じてしまうんですよね。だからといって、「おい、これは14,000円分の作業なんだぞ」とはいやらしくて言えません。というわけで言いません。言えないからこそ、ますます頼まれたくなくなるのです。

結局いつも、まあ仕方ないかと思い、引き受けています。内心は「あーあ、面倒臭いな・・」と思いつつも。。なんだか自分がしみったれた人間のように思えてきましたが、これはエンジニアの職業病みたいなものなのでしょうか・・・??

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